〜純粋な子〜   








 


 「ねぇ、侑士」

 俺と忍足先輩と向日先輩で休憩中にふと後ろから先輩の声がした。
 さっきまでいなかったから部室にいたか跡部先輩と一緒に監督のとこへ行ってたかどっちかだろう。

 「ん?なんかようか?」
 「樺地君と跡部ってどういう関係なの?」
 「主人と僕!」

 向日先輩が元気よく答えたけど先輩は綺麗に無視した。
 (さらに向日先輩煩くなるし、休憩なのに跳びすぎですよ・・)
 
 「どういう関係ってなぁ・・俺らも良くわからんけど樺地は跡部には絶対従う事は確かやで」

 今までもいろんな先輩が跡部先輩に聞いたらしいけど明確な答えは出ていないらしい。
 そういえば最近は跡部先輩の隣には先輩のほうがよくいるような気がする。

 「そう、ありがと」
 「!!俺のこと無視すんなー!!」
 「岳人、休憩はちゃんと休まないと体持たないわよ」

 向日先輩は一瞬固まってまたなんか叫んでたけど誰からも相手にされなくなった。
 それより何でそんなことを先輩が聞いてきたか気になった。
 忍足先輩もそのことを聞こうとしているみたいだったし。

 「あ、じゃ私部室に戻るから」

 だけど、先輩は何かに気付いたみたいに珍しく急いで部室のほうへ行った。


 「最近変だよな」
 「あ、宍戸先輩」

 今度話し掛けてきたのは宍戸先輩。
 確かに最近先輩はコートにあまり出てこなくなった。
 来ても今みたいに短時間ですぐに戻っていく。
 皆気づいているけど、その短時間でちゃんと仕事を終わらせていくから何も言えずにいる。

 「そうやなーなんかあったんやろか?」

 それといえない理由はもうひとつある。
 あの跡部先輩が部長の権限を使って言わないのも、この忍足先輩が言わないのも、単純な向日先輩がいつもの調子で聞かないのも。
 俺たちが先輩を大切にしてるから。
 先輩が話してくれるまでや、話すチャンスがあるまで聞くつもりは無い。
 




















 ――――――――――――――――――――――(
 
 「これ内緒の差し入れね」
 
 そうやって私の手にはジュースがある。
 その手の先にいるのは樺地君。
 
 「・・・」

 先輩尊敬の彼はすぐに受け取ってくれない事ぐらいわかっている。

 「といっても私が間違って買ったの。あいにくブドウ系の飲み物は無理だから」

 別に嘘は言ってない。ブドウ系の飲み物は無理だし。
 ・・・間違ってかったわけじゃないけど。
 だけどそんな私を見て樺地君が受け取ってくれたからよしとする事にした。

 「・・・ありがとうございます」

 彼とはあまり話したことが無かった。
 いつも誰かいるし、彼もしゃべるほうではないし。
 実力は知っている、彼のコピーは本当に純粋じゃないとできないと思う。
 絶対他のメンバーじゃできないし私だって無理。(失礼かもしれないけどあの人たちが純粋だったら大変な事になるわ)

 
 「樺地君って跡部のこと尊敬してるの?」
 「・・ハイ」

 いつもどうりのような感じだったし彼もそのつもりだと思うけれど、その返事には力があったと思う。
 どうして跡部みたいな我侭な男の事の言う事を聞くのだろう?って素直に思ってた。
 (まぁ・・跡部もいいとこもあるけれど・・・)
 でもそんなの簡単な事。
 尊敬してるから。
 きっとそうだと思ったから私はそう聞いた。
 別に樺地君が跡部の何に尊敬してるのかとかは全然わからなかったけれど。
 
 ただ最近気になる事があった。
 『樺地の居場所にが行った』って誰かが言ってた。
 べつにそんなつもりは無いけど、確かに跡部といる時間は長いと思う。
 前は口を聞くのも憂鬱だったけど、今は樺地君じゃないけど尊敬する面とか(勿論その逆も)あって苦ではなくなった。
 だから・・・ちょっとだけ樺地君に対して罪悪感があった。
 せっかくの居場所取っちゃったのよね。
 でもそんなことは言えないし・・。
 樺地君とは今微妙な関係。お互い遠慮しあっててその結果が話す回数に反映されてる。
 だけど・・・・

 「でも先輩も尊敬しています」
 「・・・・・っ?」
 
 彼がそう言った。
 一瞬頭の中がフリーズしてしまった。
 今の私は異常な反応をしてるのかもしれないけど、そんな事も考えられないほど驚いた。

 「だから・・いいです」

 ほんとに純粋な子だと思う。
 跡部とは正反対の性格でだから跡部も彼に惹かれたのだろう。
 
 「えっと・・ありがとう」
 
 まだ正常になってない頭を一生懸命使ってなんていえばいいか考えて私はその言葉を口にした。
 正直、尊敬されるなんて初めての事でなんか照れくさい。
 でも、嫌ではない。
 むしろ喜んでるのかもしれない。
 嬉しいのかも・・・・。

 やっと私が落ち着いた頃、彼のもっているジュースは空でそれまで一言も何も言ってない事に気付いた。
 それまで気がつかなかったのは私が色々考えてたのもあるけれど嫌な沈黙じゃなかったから。
 本当はもう少しここでじっとしていたかったけど。

 彼がもうすぐ探しにやってくるから逃げなくてはいけない。


 「なら、私行くね」
 「はい」

 そうやって私が教室に戻ってそこを見るとやっぱり「彼」がきてて。
 何事も無い様に通ってただけだったけど探しているに決まっている。





 「お前何処に行ってたんだよ?」
 「跡部のお気に入りと校内デートしてきた」
 「・・・」

 話し掛けてきた跡部にそう答えると跡部が不機嫌そうになったから跡部のお気に入りが誰かわかったのだろう。
 樺地君のあの純粋さにはこっちこそ尊敬させられる。
 そう私は思ったけどきっと。
 隣にいる彼もそう。


 「跡部と違っていい子よね」
 「・・・まぁな」











         ←back
                       next→
             ←back to kizuna 












〜・あとがき・〜
なかなか進展しないー。。
でも樺地はどうしても書きたかったー!!
純粋な良い子です。
メンバーの中で(っていうかこの連載に出てくる中で)一番良い子です。
まぁ、私のイメージ的に。
(っていうかなんか跡樺っぽいっておもっちゃった・・・。)
純粋な子は思っちゃ駄目ですよー(笑)
というわけで「彼」なかなか見つけられなくてイライラしてるんじゃないでしょうか?
長い鬼ごっこももうすぐ終わりますー。


2004.2.5







   








 
 
 
 
 

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!