「ずいぶん勝手なこと言ってくれてるじゃないの」




 俺らがのことを言っていると本人の声が聞こえてきた。
 幻聴・・そうおもうのが普通だろうにそうおもうより全員して振り返ったのが間抜けな気がした。















            〜信じる事〜










 俺たちがいるのはストリートテニス場の階段の上だ。
 別にテニス場にきたわけじゃなかったが適当に歩いていたわけだし・・。
 まさかが聞いているとは思わず俺らも結構色々言った。(確かに失礼だけど事実じゃねぇか)
 だけど、それに対するの返事の声が思っていたより明るくて驚いた。


 「!!!何処に行ってたんだよ!!」


 やっぱり真っ先に声をあげたのは岳人。
 っつーか声でかすぎなんだよ。
 

 「岳人・・もう少し静かにしたら?」


 そういうに俺も同じ意見だ。
 は階段の下に居て俺たちを見上げている。
 心なしか表情がすっきりしているようで、だけど何か決意のあるようないつもとは違う強い目をしていた。
 岳人だってそれに気付いてるからのほうへ飛び出さないのだろう。


 「まぁ、岳人は本当にうるさいけど何処行ってたん?」

 
 そういう忍足に岳人が噛み付くが徹底的に無視されてる事に気がつかないんだろうか・・・(まぁ、岳人はアホだし)
 それよりも全員に気が行っている。


 「何処・・・って何か用でもあるの?探してたの?」


 が首を少し傾げて不思議そうに聞いてくる。
 今回は別に居なくなったわけじゃないんだろうか?―――――――否、それは違う。

 はやっぱり意図的に居なくなっていた。短時間だったが。
 どこか、前の時と同じ雰囲気を漂わせている。


 「先に聞いたのはこっちですよ」

 「何処行ってたん?」

 
 話し相手が忍足と鳳になったからかが小さく溜息をついて口を開いた。
 


 「その様子だと誰か見たのかしら?」


 話が分かる奴、そう思う。
 何も無かったという風にするなんか通用しない事にすぐに分かっている。
 それでも、の強いまなざしが変わる事が無くて目を奪われる。
 




 いつか・・・俺のレギュラーに文句を言っていた部員がいたとき。
 

 『すくなくとも・・・あなたたちよりかは正レギュラー達のほうが努力してるわ』

 と言っていた時、その時もこんな強いまなざしだった。
 あの後、あの時の部員は素直に俺にもにも謝った。それは、の言葉のせいじゃなくあの眼差しのせいだと俺は思った。






 今のは声とか言葉は軽く言ってる様だけど本気。そう目で訴えられて直視したくないのに目がそらせない。
 

 「あぁ、岳人がな」

 「・・・それで、こんなに早かったのね・・・」

 「それで何してたんだよ」


 跡部の声からも表情からも何を考えているか分からない。
 ポーカーフェイス。
 
 
 「と一緒に出て行ったのだけれど行きたい場所の意見が合わなくて戻ってきたの」


 だけど、そんな跡部もこの言葉に驚きを表情に出した。
 俺だって驚いた。の意見が合わないなんて俺が聞いた中じゃ初めてだ。
 二人には俺たちには入り込めないような繋がりがあってどこかで「一心同体」そんなイメージがあった。
 そんな俺達の中で真っ先にいつもどうりに戻ったのは忍足だった。


 「は何処に行きたかったん?」

 「さっきまで分からなかったの」


 普通に話してるけど俺達の距離は相変わらず離れていてはたから見たら怪しいだろう。
 でも、誰一人近づこうとは思わない。

 
 「さっきまで?」

 「うん。だけど今は何処に行きたいかわかったの」

 
 が・・親の事を話してくれたときみたいに俺たちは黙っての話を聞いた。
 それがにも分かったらしく小さくうなずいた。


 「最近ね、を見てると前の・・私が公園に行った前の私に見えてたの。だからは、誰もいないところに行きたいって言ったわ。
  だけど・・私は何となくだけど行きたくなかったの。本当に何となくだけど」

 
 「あの人たちが突然きたのには私ももどうしようもなく動揺したけれど、私は誰も居ないところには行きたくなかった。
  私は・・ここに着たかったの。これもなんとなくだけど」


 ここで、が一度口をつぐんだ。
 


 「ねー?どっちにしても今居るところはだけしか居ないよ?」

 
 その時の間を待っていたようにジローがじっとを見つめながら言った。
 この雰囲気に合わないのんびりした声だけど言葉はしっかりとを突いている。


 「・・・うん、さっきの言葉は訂正する。『私の行きたい場所は目の前にあるわ。』」

 「よかったぁ」


 そういってジローはまた黙った。


 「いつも・・信じる事とか仲間とか嘘だって教えられてきたから・・。それに私自分でも素直じゃないとは思う。
  だけど私は信じる事を信じてみたいって・・あなたたちとあって思ったわ」


 そう言ってが一段ずつゆっくりと階段を上がってきた。
 俺たちも何も言わずにそんなを見ている。
 誰もがのその気持ちを受け止める為に。



 「別に強くもないし、素直じゃない。だけど私はあなたたちを信じてみたい」



 あの眼差しはそういう意味だったんだ。
 信じる事を見つけた。
 


 「別に俺たちは強いやつだろうが弱い奴だろうが素直じゃない奴だって信じないなんて一言も言ってないぜ」

 「どっちかっていうと今更ですよ、先輩」

 「まぁ、そういうこっちゃな」

 「俺のこと信じてるし〜?ねぇ、岳人」

 「おぅ!もちろんだぜ」

 「ウス」

 「そんなに気にすんな」



 相変わらず言いたい放題だな、って俺も思ったけど今じゃないといえなかった。
 が本音を言ってくれたから今しか言えない本音を俺たちも言った。
 ただそれだけだ。

 ただそれだけで・・


 「ありがとう」


 って消えそうな声が聞けた。
 
 本当にそれだけで俺たちは満足した。




 と同じ場所に立って俺たちは歩き始めた。。

















〜・あとがき・〜
ってことで2部の氷帝終わり・・?
まぁ、後日談的なものもあるけど。。
ヒロインは成長してるのにどうして文章は成長してくれないんだろう・・・。
これは、宍戸を視点に書いたんですが、途中で「人一倍の努力」を読んだら、
「不燃焼小説!」
とおもったので(今更・・・)微妙に書いてみたり・・。
それにしても「どきどき」からまた新たに(?)書いて、
「わすれられないもの」から良く頑張ったなーって思う。。
今までの中でいちばん書いてる時期かもな・・・。
(速さとか量とかじゃなくて・・ですよ)
氷帝が落ち着いて自己満足中です。
べつに自画自賛してるわけじゃないですけど・・(こんなの褒めようがないし・・・)





2004.1.30






 


 
 

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