― 初夏の出来事 ―
「なぁ、なんでは跡部の事好きになったん?」
前触れも無く突然の忍足の言葉に私はかなり間抜けな顔をしただろう。
(でも本当に突然よ!)
今日は土曜日、男テニのマネージャーの私はお昼休みを部室で過ごしていた。
ここに居るのは上で発言をしていた忍足、岳人、宍戸と私だけ。
「と、突然何よ!!」
「真っ赤やで〜」
「////」
「でどうなんだよ?っていうかお前らいつから付き合ってたっけ?」
忍足&向日ペアの言葉にどんどん追い詰められていく私。
そう、私はあの男テニ部長で生徒会長もやっていて俺様で自己中な跡部景吾と付き合っている。
ちなみに跡部は今監督に呼ばれていてここには居ない。
「いつからって・・・1年のときのバレンタインからだけど・・・」
「何気にかなり長いよな、お前ら」
「バレンタインって事はから告ったん?」
「んーなんか告るって言うかその場の雰囲気で・・・」
それ以前から友達以上の関係だったからちゃんと好きって言ったのがそのときだった。
私が跡部を好きになったとき―――――。
1年生の時の事。
(ったくほとんどマネージャー辞めちゃうんだから。これからが一番大変なときなのに)
1年のとき、私はテニスに興味があってテニス部に入部した。
だけどお世辞にも運動神経は良いとは言えない私は友達の誘いや先輩の誘いで男テニのマネージャーとして入部した。
ほとんどの子はその頃のレギュラーの先輩に憧れて入っていて結局ハードな練習や仕事についていけなくて辞めていった。
「暑いなーもう夏本番かな」
急に暑くなったその日私はたくさんのタオルを干しながら独り言を言っていた。
先輩マネージャはコートでスコアを取ったりしていて1年の私の仕事は大体雑用ばかり。
それでも楽しんでいるからこの部に入ったことを後悔はしない。
半分ほど干した時後ろに人の気配を感じた。
ふと振り返るとそこにはテニス部の先輩らしい人が3人。
部員の多さに私はまだ全員を覚えていなかったけど見るからに3年生の平部員だ。
この暑い中汗もかいてない様子を見るとサボっていたのだろう。
「なんですか?」
私がそういうと先輩たちはニヤニヤ笑いながら少しずつ近づいてきた。
なんとなく嫌な予感がする。
「君、今年入ったマネージャーだよね」
「結構可愛い顔してるよね」
身の危険を感じて自然と後ずさりした。
「逃げないでよ〜」
そう言って一人の先輩が私の腕をつかんだ。
「離してください!!」
私がその腕を振り払おうとしたらさらに力を込められた。
ここは建物の四角になっていてテニスコートからは見えない。
3人が本当に近くなる・・・。
「離して!!」
そう私が叫んだのと同じタイミングで凄い音がした。
一瞬何があったかわからなくて目をつぶりそっと目をあけたらタオルを干していた棒が見事に落ちている。
その激しい音にテニスコートからたくさんの部員がやってきた。
「何やってるんだ!!」
その中には部長も居て3人は逃げるように去っていった。
私は放心状態になっててマネージャの先輩が近寄ってきてくれるまで動けなかった。
「大丈夫だった?」
「あ、はい」
「あいつら幽霊部員だからな、監督に言って退部させようか」
そんな先輩たちの言葉を聞きながら見事に全部落ちたタオルを眺めた。
そして何故か近くにテニスボールが落ちていた。
結局その場は収まりまた私はタオルを洗いなおす為に両手にいっぱいタオルを持った。
すると今度は違う方から視線を感じた。
見るとラケットを手に持った部員。
タオルで顔が見えなかったから少しおろしてみたらそれは跡部だった。
といっても私は跡部と話したことは一度もない。
同じ学年で同じクラブで年齢問わず人気のある、跡部についての知識はそれぐらい。
だけどその跡部は呆れてるのか怒っているのかよく分からない表情で私を見ていた。
「何か用?」
なんとなく気まずい雰囲気に私は何かいわずに入られなかった。
「別に」
そっけない返事だったけどその目は真剣で。
オーラ―も凄く強くて。
私は捕らわれてしまった。
「練習しないの?」
「あんだけ騒がせといて練習できるか」
跡部はやっぱり初めから跡部だった。
私は少し落ち着いて状況を把握してみた。
そしてある一つの答えを見つけた。
「・・・さっき棒倒したの跡部?」
「さぁな」
この位置、手にあるラケット。
そして棒の近くに落ちていたテニスボール。
「・・・ありがと」
そういうと跡部は口元に笑みを浮かべた。
不敵な笑みで少し軽蔑感を受け取ったけどそれ以上に・・・・見とれてしまった。
素直じゃない性格も。
テニスの腕も。
あの笑みも。
全てを知ったあの初夏の出来事は。
「、何ボーっとしてんだよ」
「な、ちょっと考え事してただけでしょ!」
いつのまにか跡部も戻ってきていて後ろから頭をたたかれた。
「に考え事なんて似合わねぇな」
「失礼なー!!」
「あ、今日1年のマネ休みだからそっちの仕事もしとけよ」
私の反論なんか気にもせず跡部はいう。
って1年がいないなら時間かかるしタオルを洗濯しに行かなくちゃ。
私は部室にあったタオルをあの時みたいに両手にいっぱい持って立ち上がって出て行こうとしたけどドアをあけることが出来なくて。
そしたら跡部が何も言わずに開けてくれて一緒に外に出た。
「跡部?休んでていいよ」
「タオル干すときのお前は一番無防備だろうが」
ようするに一緒にいてくれるって事ね。
・・・・ったく本当に素直じゃないんだから。
少しだけ背伸びをして跡部の耳元でささやく。
「ありがと、景吾」
そんな今日はあの時より暑い―――――――――。
―・あとがき・―
第一話目「初夏の出来事」です。
短編や恋愛をあまり書かないから書き方わすれたー。
100題では普通の恋愛を書きたいなぁと思ってチャレンジしてみたんですけど・・・。
過去と現在が上手く書き分けれなくて微妙だ・・・。
まだまだ修行しないと・・・・・。
04.06.06